2.屋根の形状と設計
屋根の形状
屋根は建物の美観を大きく左右するデザイン的要素として重要な役割を持っています。そして、個々の空間だけでなく、集合体である町全体の景観にもかかわってきます。
屋根の原型には大別して切妻、寄棟、入母屋の三つの形があります。切妻とは、屋根の両端を垂直に切り落とした形式で最もシンプルですが、雨もりなど故障の少ない屋根です。切り落とされた両端の妻側に大きな妻壁を持ち、雨水は棟から両側に流れます。
寄棟とは、屋根の頂上の水平部分である棟に向かって、四面の屋根を寄せ集めた形式で、切妻より重厚な感じを与えます。隅棟を有し、四方の軒に雨水が流れる形で、雨水からの外壁保護という点では有利です。しかし、小屋裏の通気性の確保が難しい造りといえます。
入母屋とは、上部が切妻、下部が寄棟形式になった複合形式で、社寺等の伝統的建築物に多く見られる屋根形式です。最も重厚なイメージを与えます。
他に、一方向に傾斜した片流れ、寄棟と同じ形式ですが、隅棟が一点に集まる正方形平面の方形、パリの街並みを特徴づけるマンサード(腰折れ屋根)などの形もあります。
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屋根の設計
屋根のデザインも重要ですが、設計段階では勾配、荷重、野地寸法など屋根の構造を考慮しなければなりません。
各種の屋根材には標準的な屋根(野地)勾配があり、たとえば粘土瓦和形では3寸5分以上とされますが、これは屋根の流れ長さとの相関関係でみる必要があります。また瓦の場合は一枚ごとに厚みがあり、流れに沿った重なりをもっているので、施工された瓦の勾配は屋根勾配より 戻って緩くなっています(瓦の戻り勾配)。
荷重も屋根にとっては大事な要素です。屋根材料が屋根構造に比べて著しく重ければ、垂木に負担がかかり、ひいては野地、さらにそこに葺かれた屋根材にも影響がでてきます。
昔は瓦の働き寸法に応じて野地寸法が決められていたと言います。 最近では北側斜線、高さ制限の問題もあって屋根形状が複雑にならざるを得ない状況ですが、野地づくりに無理があるのは屋根にとってよくないことです。
屋根材には材料同士の重なり部分を除いた働き寸法があります。屋根として機能が満たされている上での、デザインが大切といえます。
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